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2016.02.18

[極私的版]心にのこる名作コピー その4

こんにちは、宮保です。
ごく普通の41歳です。

さて、僕の好きなコピー、
心にのこる名作コピーを
勝手気ままに語っています。

今回は
—-
ふつうの17歳なんか、ひとりもいない。
—-
です。

2000年、KDDI(au)の広告です。
コピーライターは秋山晶さん。
そう話す同業者も多いと思いますけど
僕がもっとも尊敬するコピーライターの一人です。
余談ですが、2011年に初めて秋山さんにお会いできた夜の
記憶がほぼありません。ド緊張してたからです。

さておき。僕は
当たり前のことをただまっすぐに言って
でもその時代に生きる人間をハッとさせる、
そんなコピーに憧れます。

2000年あたりは17歳が悪い意味で
世間の注目を集めた時代でした。
見ず知らずの主婦を殺害して
「人を殺してみたかった」と語った17歳。
ネット掲示板に犯行予告を書き込んで
バスをジャックし乗客を殺害した17歳。
ビデオ屋に手製爆弾を投げ込んだ17歳。
たった一人の家族だった母親を撲殺した16歳などなど
17歳前後の少年による事件が立て続けに起こります。
2000年の17歳が、その3年前に社会を震撼させた
神戸連続児童殺傷事件の少年Aと
同い年だったことも報道に拍車をかけて
「今の17歳は理解の及ばない存在なのかもしれない」と
時代の空気が導かれていきました。

「今の17歳は普通じゃない」
「いやいやほとんどの17歳は普通だろ」と
あちこちで語られる時代に投げかけられたコピーが
この『ふつうの17歳なんか、ひとりもいない』です。

17歳が異常かどうかではなくて、
そもそも「17歳」という集団なんか実在しない、と
たくさんの人間をひとくくりで語るんじゃない、と
想像力を失いかけた世間に投げかけたのでした。
ああ、なんてかっこいい。

もちろんかっこいい表現といい広告は
イコールではありませんが
携帯新規加入の主要ターゲットは18歳であり
その年代に届ける広告という意図も明白です。
(まあ、こうしてターゲットとか言ってしまうことも
人間をひとまとめにする行為なんですけども。。)

時代に普遍を投げかけて、ちゃんと機能する広告。
そういう仕事にも、それができる大人にも憧れますね。
ではまた。宮保でした。

Author : miyabo

2015.12.29

今年も一年ありがとうございました。

こんにちは、宮保です。
ワザナカは昨日が仕事納め。
ぼくもちょっとだけ残務処理をして
明日から年末年始のお休みに入ります。
皆々様、今年も一年ありがとうございました。
おかげさまで社員一同、笑って年を越せそうです。
2015wazanaka0.jpg
新年の営業は1/5(火)~となります。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。

Author : miyabo

2015.11.12

[極私的版]心にのこる名作コピー その3

こんにちは、宮保です。
好きな形容詞は「女々しい」、
好きな動詞は「振り返る」です。

さて。
僕の好きなコピー、
心に残る名作コピーを
自分勝手に語っております。

今回は、僕がもっとも
胸がキュンキュンしちゃうコピー(CM)。
そう、それは
———-
石田ゆり子
———-
です。

じゃなくて。
———-
「女房酔わせてどうするつもり?」
———-
です。

とにかく、あらためて1回見てください。
2005年ニッカウヰスキーオールモルトのCMです。

…はああ。。。美しい。。
もう無限ループで48時間は見ていられますね。
こんな人が毎晩家にいたら…
で、「どうするつもり?」とか言われたら…

…という男の願望的胸キュンが
この短い映像に満ち満ちているわけですが
それだけでは終わらないのが
このCMの胸キュン度が他の追随を許さないところです。

僕でも年齢的にギリギリなので
若い方はご存知ないのかもですが
この石田ゆり子編に先立つこと15年前、
同じセリフで一世を風靡した前作がありました。
1990年、同じくニッカオールモルトのCMです。

中野良子編と、
(「女房酔わせて~」のセリフは出てきませんが)
田中美佐子編がありました。
典型的「夫婦で家飲み素敵でしょ?」な明るいCMです。

同じ商品、同じセリフ、同じ「夫婦で家飲み」で
復刻させたはずの石田編なのに、
全然違うものに変えてきてるんです。

だいいち、石田編で使われている
スターダストレビュー「木蘭の涙」は
「夫婦で家飲み素敵でしょ」にはまったく合いません。
確かに名曲には違いないですが
雰囲気がいいから、だけで通る曲でもないです。
だってこれ死別の悲しみを歌う曲だし。


逢いたくて逢いたくて
この胸のささやきが
あなたを探している
あなたを呼んでいる
いつまでもいつまでも
そばにいると言ってた
あなたは嘘つきだね
わたしを置き去りに

この曲を採用した意図に思い至ったとき
ただ胸をときめかせていた男どもの脳裏を
もしかして、と悲しい仮説がよぎります。
そしてさらに悲しいことに、その仮説は
このCMのいくつかの疑問に答えてしまいます。

なぜ
前2作では夫婦ふたりを見る第三者視点だったのに
石田編では夫の視点にしたのか?
しかもその視点はゆらゆら揺れているのか?

なぜ
前2作では夫婦が仲良くそばに座っているのに
石田編の妻は室内を(不自然に)フラフラして
夫に近づかないのか? むしろ離れていくのか?

なぜ
前2作では「さしつさされつ」の夫婦飲みなのに
石田編の冒頭シーンの夫は「手酌」なのか?
そして夫の視線は何度も手元のグラスに落ちるのか?

 

腑に落ちる答えはひとつです。
それは、石田ゆり子が演じているのは
「妻役」ではなく「亡き妻役」だということ。

石田編で描かれたのは、
もう会えないはずの妻に会う一夜の夢の物語。
そう思って見直すと
彼女が囁く「女房酔わせてどうするつもり?」も
表情も、仕草も、笑い声も息づかいも
最初とは180度意味が変わって見えてきます。
それに気づいてしまった時の切なさは、
先の男の願望的胸キュンとは比べものになりません。
もはや喀血レベルの喪失感です。

これ、見る者が一度は美しい妻と幸福な時間を過ごし、
何度目かでそれがすでに失われたものだと気づいて
喪失と孤独を追体験するという
いわば胸キュン二重構造なんですきっと。
胸キュン二重構造。ええ、言いたいだけですけど。

で、
「(幸せも悲しみも)すべてを愛せる、モルト100。」
と。

ひとつの解釈で本当のところはわかりませんけど
なんにせよ僕はこのCMが大好きです。
そしてもうお気づきでしょうが
それより何より石田ゆり子が大好きです。
ではまた。宮保でした。

Author : miyabo

2015.08.26

[極私的版]心にのこる名作コピー その2

嫉妬。
それは人間が持つ感情のうち
もっとも醜いもののひとつ。

こんにちは、宮保です。
僕の好きなコピー、
心に残る名作コピーを
自分勝手に語っています。

今回は、僕がたぶん今まででいちばん
「初見で嫉妬したコピー」です。

コピーの好き嫌いを決める基準の中で
少なくとも僕にとっては
嫉妬はなかなか大きなポイントのひとつです。

「どうしてこれを思いついたのが
自分ではないのかムキー!」ってやつですね。
ということで、今回の名作コピーは

———-
宅配は、ネコである。
———-
です。

 

0826neko.jpg

ああ、なんてキャッチー。
ああ、なんてわかりやすい。
何より端的にして的確。ムキー。

広告主は、言うまでもなくヤマト運輸。
コピーライターは米澤克雄さんで
2009年にこのコピーで
TCC最高新人賞を獲得されています。

何に嫉妬しちゃうかってまず
これを思いつくために必要な材料は
とうの昔から自分の手元に揃っていた、
ってことですね。
いや、もちろん発注すら受けてないんですけど。

「我輩は猫である。」という
おそらく日本人なら誰でも知ってるフレーズが
たった2音(2音かよ!)変えただけで
クライアントが競合他社をぶっこ抜く
とても機能的なコピーになっています。

広告主はどこだって「ウチが一番」と言いたいわけですが
そのまま言って伝わるほど世間は単純ではない
…はずなのに、「宅配便ならウチでしょ」と
これ以上ないくらい簡潔に言って人々に印象づけちゃった、
というのがこのコピーのお見事なところです。
飛脚でもペリカンでも、他の何でもこうはいきません。
それを発見して世に出されたことに
もう賞賛と嫉妬が心の中に渦を巻きますね。

嫉妬は醜いですが、
コピーに関してはそれも楽しいです。いや悔しいです。
ではまた。宮保でした。

Author : miyabo

2015.08.03

[極私的版]心にのこる名作コピー その1

こんにちは、宮保です。
たまにここで自分の好きなコピー、
心に残る名作コピーについて
勝手に書くことにしました。
第1回目は、
「極私的版」と言いながら
とても有名なコピーですけども
読むと必ず泣いてしまう
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死ぬのが恐いから
飼わないなんて、
言わないで欲しい。

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です。
僕なんかもうこの時点で脊髄反射で半ベソですね。
0803copy_2015080316431956d.jpg
2004年、日本ペットフード株式会社の広告。
コピーライターは児島令子さんです。
ボディコピー全文打ちます。
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死ぬのが恐いから
飼わないなんて、
言わないで欲しい。
おうちを汚すから飼わないというなら、
犬はお行儀を身につけることができる。
留守がちだから飼わないというなら、
犬はけなげにも、孤独と向きあおうと努力する
かもしれない。貧乏だから飼わないというなら
犬はきっといっしょに貧乏を楽しんでくれる。
だけど・・・死ぬのが恐いからって言われたら、
犬はもうお手上げだ。すべての犬は、永遠じゃない。
いつかはいなくなる。でもそれまでは、
すごく生きている。すごく生きているよ。
たぶん今日も、日本中の犬たちはすごく生きていて、
飼い主たちは、大変であつくるしくって、
幸せな時間を共有しているはず。
飼いたいけど飼わないという人がいたら、
伝えて欲しい。犬たちは、
あなたを悲しませるためにやっては来ない。
あなたを微笑ませるためにやって来るのだと。
どこかの神様から、ムクムクしたあったかい命を
預かってみるのは、人に与えられた、
素朴であって高尚な楽しみでありますよと。

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ね、とってもいい文章でしょ?
…なんて言うと思いますか。
「あざといなあ」と読むたびに思います。
でも泣いてしまうんです。そこが弱点だから。
僕がこのコピーを好きなのは
琴線に触れるからって理由がないとはいいませんが
もっとも狙うべき人のもっとも狙うべき弱点を
きちんと突いているからだと思います。
ペットフードの需要拡大を目指すなら
飼いたいのに飼ってない人を狙って
飼えない理由を消してやるのがいちばん近道です。
泣かせたり笑わせたり、読んだ人を感動させる文章は
ただそれだけで優れた文章だと思うけれど
広告コピーに限っていうなら
感動はあくまで手段であって目的にはならないよ、
ってことをいつも思い出させてくれるコピーです。
(死んだウチの犬のことも思い出すけど)
だから「あざとい」ってとてもいい意味で、です。
ではまた。宮保でした。

Author : miyabo