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2016.12.05

[極私的版]心にのこる名作コピー その6

こんにちは、宮保です。
僕の好きなコピー、
心に残るいいコピーを
気の向くままに語っています。

いきなり話が脱線しますけど、
SNSとかWEBサービスでユーザーIDを登録するとき、
簡単な文字列で済まそうとすると
「そのIDは他のユーザーによってすでに使われています」
って言われてしまう場合があります。

要は早いもん勝ちで、
短くて単純な文字列ほど誰かに先に取られています。
その場合は、やむなくもっと長い文字列に変えて
他の人に使われてないものを探すことになります。

何を言いたいかというと
「言葉もこれと似たようなものなんじゃないかなあ」
ってことで。

たとえば日本語なら、すごく単純に言ってしまえば
100程度の音の組み合わせで成り立っています。

原始ヒトが言葉を使い始めた時、
それはつまりモノに名前をつけ始めた時、
短くて単純な音の組み合わせから順番に
使われていったのではないかなあ、と。

逆に言えば、その名前が短く音が単純であるほど
本質的なところでヒトにとって大切だったり
重要だったりするものなんじゃないのかなあ、
という妄想をしたことがあります。

たとえば、手(て)、目(め)、歯(は)。
たとえば、木(き)、葉(は)、根(ね)、実(み)。
たとえば、日・火(ひ)、天・雨(あま・あめ)、地・土(ち・つち)。
それから、死(し)とか。愛(あい)とか恋(こい)とかも。
人が生きることに深く関わるようなものや
ずっと昔から身近にあるものの名前はだいたい短いですね。

まあ戯れ言には違いないのですが
人にとって重要なものほど名前がシンプルというのは
あながち的外れな話でもない気がします。
だってもし「手」の呼び名が
スリジャヤワルダナプラコッテだったら
毎日すごいめんどくさいでしょうし。

というわけで、前置きが長くなりましたが
今回の名作コピーは
———
ち、
のち、
いのち。
———

です。

2013年、日本赤十字社の献血促進ポスターです。
コピーを書いたのは安藤真理さん。
このお仕事で2015年に
TCC賞審査委員長賞を受賞されています。
一度ご挨拶だけしたことがありますが
その時いただいた名刺には
「コピーライター」の文字はありません。
安藤さんはデザイナーの方です。

すごく単純で、短くて、
ともすればただの言葉遊びに見える。
こういうものを、プロのコピーライターなら
避けようという意識が働くと思うんです。
少なくとも僕はそうです。

言葉は、たくさんの単語を組み合わせることで
より複雑なことや繊細なことまで
表現することができます。
で、その複雑さや繊細さを思うように操ることを
プロであることの拠りどころに
してしまいがちだなあと時々思います。

ち、のち、いのち。

まったく単純で、ほんとに短くて、
でも広告として伝えたいメッセージを
しっかりと訴えて印象づけている。
こういう仕事、すごく素敵だなあと思います。

Author : miyabo