2015.11.30
デザインの理念と実践
砂原です。
今回は珍しくデザインの話をば、
といっても自分で語れるほどのことばを持たず…
人のことばをお借りする方法でいきたいと思います!
「デザインの理念と実践」六耀社 (2005)
デザインとは何かを、プロダクトや建築、グラフィックなど各分野のプロフェッショナルが登場して語る1冊です。
デザイナーの言葉が1ページ程に短くまとめられていて、代表的な仕事も写真付きで紹介されています。
それぞれのデザインに対する哲学的な考え方を知るだけでも世界が広がりますが、
さらにその主張と仕事がしっかりとリンクしている感じが面白く
まさにこの本のタイトルである「デザインの理念と実践」を説得力をもって感じ学ぶことができます。
この本を買って読んだのは20代半ば。当時の自分は正直よく分からかったのですが(残念)、
今読み返してみると深く考えさせられる1冊でした。
そのなかで印象的なことばを抜粋して紹介したいと思います。
__________________
デザインはあくまでも合目的性の上に立ったクリエイティブである。
デザイナー個人の嗜好や思い入れを超えた客観的な判断が基盤となる。そのためには、まず自分自身にとって一体それが何であるのか、どうあってほしいのか、どうあるべきなのかという確認行為がとても大切なことであり、物事を論理的、感覚的に整理整頓する力がデザインの99%を占めると言っても過言ではない。(中略)しかし、残りの1%の中にそのデザインの輝きや魅力を決定的に左右させる重要な何かがあるのも事実だ。それは、その時代その時代に吹く風のようなものかも知れないし、その時代に対するスパイスのようなものなのかも知れない。
松永真(グラフィックデザイナー)
__________________
明るすぎず、暗すぎず、もちろん照明器具の姿はどこにも見当たらず、目のやり場に困らないように明快な光のフォーカルポイント(焦点)が与えられている。そんな時、そこには気配と化した光の粒子が舞っているはずだ。建築照明デザインとは、このような「巧妙な気配を作り出すための光の罠」を仕掛ける仕事である。
面出薫(照明デザイナー)
__________________
「デザインは芸術ではない」という意見に私は反対ではありません。
(中略)野に咲き乱れる花々の色や形にしても、ミツバチやチョウを呼び寄せるという目的、そのための神のデザインの工夫にちがいありません。そう考える一方で、私はデザインがその目的や機能を果たすだけで終わるのではく、何かそれ以上のものでありたいと願っています。なぜなら花のデザイン、その歌っているような笑っているような、色と形のひとつひとつは、もはや虫たちを集めるという合理主義をはるかに逸脱しているようにしか見えないからです。
佐藤晃一(グラフィックデザイナー)
__________________
デザインは自己の延長ではなく環境細胞の一部である。つくり出すというより、環境のなかに見い出すという感覚が強い。(中略)人とものと環境の折り合いをつけることがデザインである。それはシャボン玉のように柔軟で薄い空気の輪郭である。しなやかな輪郭をデザインすることが私の仕事だと思っている。
深澤直人(プロダクトデザイナー)
__________________
「スパイス」、「巧妙な気配」、「しなやかな輪郭」…
優れたデザイナーはデザインを語るためのじぶんのことばを持っているということにも気付いた1冊でした。
オススメです!