2010.11.16
手品師に似ている。
この間読んだ小説の、ちょっと印象に残った一節。
「ところで、あなたはいま何をされているんです? 手品ですか?」
「いや、僕は手品はまったく。書く方の仕事で……でもまぁ似たようなもんです。
労働するのは手だけだし、小さなものを大きく見せたりして、
ときには何もないところから花を咲かせたりしなくちゃならないし」
「夢のある仕事じゃないですか」
「いや、手品師っていうのは種や仕掛けを知っているから。
じつは孤独な商売なんです。いつでもひとりだけ駅に取り残されている気分です」
(「つむじ風食堂の夜」/吉田篤弘)
引用部分の主旨とはあまり関係ないですけど、
手品師ってのは、手品を披露すること以上に
種や仕掛けを考えることが仕事なんですよね。
舞台に立つときには、実は仕事の大半が終わってる。
そういう意味でも僕の仕事と似ているのかなあと思います。
書くことじゃなく、何を書くのか考えることが仕事。
当たり前だけど、だからこそそれだけは忘れないように
気をつけなくちゃと思います。